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August 20, 2017

なぜ本の著者は図書館で自著を借りられると怒るのか 印税のカラクリ

元朝日新聞社の記者で、現在フリーになった稲垣えみ子さんの記事がプチ炎上しているようですね。

なんでも、自著で書いたことについて、行政機関に呼ばれてお話する機会を得た際に、自分が書いた本が、図書館から借りられた本で、いたく傷ついたというのが概要。
僕も本を出しているので、稲垣さんのいわんとされたいことはよくわかります。
僕がもし、その現場に居合わせたら、傷つくどころか、勉強会に参加した役人全員を、助走をつけてグーで殴ってシメていたことでしょう。(ぐっふっふっふ)

「いい大人が勉強会開くなら、千円そこそこの本くらい自腹で買わんかい」、と。

本を一冊書くとしたら最低3ヶ月は楽にかかるんですよ。(超人的に筆の速い作家さんもいるでしょうけど)。下手したら半年、数年越しも制作がかかることがありえます。


実用書やノンフィクションであれば、書いている内容を保障するために、資料を読み込んだり、実際に取材して調べるため、時間もお金もかかるんですね。
(加えていうなら、書くテーマが告発的な内容なら、裁判で訴えられるリスクもある)

ぶっちゃけた話、出版社さんから「次はこういった本を出しましょう」といった打診があっても、ノンフィクションや実用書の場合、制作費用が出るなんてことはまずありません。
自分でアルバイトするなり、他の仕事をしながら日銭を稼ぎつつ、ほんとうに書店さんに並ぶかどうかもわからない本の制作にお金を突っ込み、さらに時間を費やしてひたすら原稿を書くわけですね。
で、めでたく本が書店さんに並んだとします。
ここまでで、著者にとっては涙涙なのですが、次なる試練が待っておるわけです。

本が出たからといって、それまで突っ込んだ自腹の制作費を回収できるとは限らんのですわ。これが。

大多数の出版社は、著者への報酬支払いについて、印税形式を取っています。
(「印税長者」だの「印税生活」という言葉は、どこかで聞いたことがある方も多いかと思います。)
この「印税」なる報酬も、ちょっと変わっていて、本が売れても売れなくても、新しく本を印刷したぶん報酬をくれる制度なんですな。
最近は、ノンフィクションや実用書は、初版(書店さんに最初に送り出す本)を3000部から5000部に設定している会社が多いと思います。
一般的に印税は販売価格の10パーセントというのが相場なので、仮に1500円の本なら、1冊あたりの印税は150円ということになります。
で、3000冊~5000冊印刷されれば、45万円から75万円の印税が入ってくるわけですが、もし、自腹で突っ込んだ制作費がこの金額を上回っていれば、3ヶ月から半年も時間をかけて仕事したのに、ウン十万単位で赤字を背負うわけです。
最近は、印税形式どころか、実売形式(まんま新品の本が売れた時に印税払いますよってシステム)の報酬で、本を出す会社さんも増えました。
てなわけで、本が出た時点で、生活費を全部突っ込んだ馬券を握りしめたような状態になってる著者さんもいるはず。
はらはらしながら、自分の本が売れてくれるのを祈っているわけですね。

困ったことに、「印税」なる報酬は、新しい本が印刷されないと著者には一円も入りません。
つまり、ブックオフやアマゾンマーケットプレイスで「古本」を買ってもらっても、著者としては1円もお金が入らないわけです。印税が発生するのは、アマゾンの新刊本や書店に並んでいる本のみです。

本の評判がよくて、「売れそうだ」と出版社が判断した場合、出版社は追加の本を印刷して書店に並べます。
重版といいますが、さらに売れれば3刷、4刷というように、追加で印刷していきます。つまり、著者にも報酬が入るので、制作費回収ができて、黒字になるわけですね。
ところが、ブックオフやアマゾンのマーケットプレイスで買う方が増えると、出版社は増刷を見送ります。著者は事実上、赤字を背負うことになります。
新刊を出したばかりの著者に対して、ブックオフやらアマゾンマーケットプレイスで本を買うことを推奨するのは、阪神タイガースのファンの中で、ジャイアンツの選手を応援するくらいひんしゅくを買うことだと思ってください。

つうか、印税生活なんて優雅なもんじゃなくて、マジで借金漬けになりかねませんから。
ちなみに、僕のところにも「ブックオフやアマゾンマーケットプレイスで買いました」なんてメールを送ってくる方がいるわけですが、(悪意なくね)
しかも、本を買ったんだからなにがしのサービスをしろという方までいらっしゃるわけですが(ツイッターのアカウントが書いてあってフォローしろとかいうメールを受け取ったことがあります。やなこった)
著者側としては、儲かる儲からない以前に、次の本を書くことが出来なくなるので、本当に困るというのが正直なところです。
新しく本を書くために、他の仕事をして貯金をしなければいけないなんてケースも珍しくありません。
古本と新品を比べても、せいぜい数百円の違いだと思いますので、「この人には本を書き続けてほしい」と思う著者に対しては、新品の本を買ってあげてほしいと思います。
そうそう、冒頭で触れた稲垣さんのお話ですが、図書館は、新刊を買ってくれているので、少なくとも1冊ぶんの印税は著者に入っているはずなんですね。
ですから、古本を買おうと思っている方は、せめて図書館に新刊リクエストを出していただけると有り難いです。
運がよければ司書さんが、新刊として購入して図書館に入れてくれるので、著者としても報酬が入り、執筆活動を継続することが可能になります。
で、自著のアマゾンアフィリのリンクを張るわけだけど、もちろんポチるよね?
もちろん、図書館にリクエストを出してくれても歓迎だよ。(はあと)

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