« July 2016 | Main | November 2016 »

August 2016

August 09, 2016

長崎原爆忌

北九州が舞台になった原爆を題材にした拙著 児童向け小説「ぼくたちの空とポポの木」のテーマである長崎の原爆投下の日から、71年目の朝を迎えました。

ちょうど71年前のこの日、原爆を搭載した米軍のB29爆撃機 「ボックス・カー」は、グアム島の近くにあるテアニンの基地を 飛び立ち、僕が生まれた街・北九州の小倉に向かっていました。
奇しくも、71年前のこの日の小倉の空は 前日の八幡大空襲の煙のために 地上が確認できないほど曇っていたため、 急遽、攻撃目標が長崎に変更されたそうです。

広島に投下されたウラン235型原爆の2倍以上、 TNT火薬22キロトン相当の破壊力があるといわれていた プルトニウム239型原爆・ファットマンは、 一瞬にして長崎の市街地を焼き尽くし、 死者・負傷者14万人、消失面積6,702,300m2、 全焼全壊計約12,900棟という被害をもたらしました。

また、爆発の際に放出された放射線の影響で、 現在も後遺症と戦っている方が たくさんいらっしゃいます。

NBC・長崎放送の記者として活躍された伊藤明彦さんは ご自身の被爆体験を通して、 1971年より、全国を訪ね歩いて ヒロシマ、ナガサキの被爆者の方284人の証言を、 音声ファイルに収めていらっしゃいます。

被爆者の声 ヒロシマ・ナガサキ 私たちは忘れない ※クリックすると、音声ファイルを納めたホームページに ジャンプします。ぜひ一度ご高覧ください
当時は、現在と社会環境が違った部分があったとはいえ、 家族や地域社会の人たちと生きていく「生活」の本質は 現在と変わらなかったはずです。
様々な年齢、そして様々な社会的立場にあった方たちが 述べられる71年前の生々しい体験は、この問題が 決して過ぎ去った過去の危機ではないことを 伝えているように思います。
同時に、経済が一国の政治の力すら凌駕する する力を持ち始めた現在の社会に住む私たちは、 この問題が、私たち日本人だけの問題ではなく 今も続いている危機であるということを伝えていかなければ ならないように思います。

71年前の長崎の街を、私は見たことがありません。
訪れた人を暖かく迎えている 異国情緒の街・長崎のシンボルともいえる 浦上天主堂は
暖かく澄み切った荘厳な空気の中、 静かに人々をみつめているかの ように見えますが
原爆投下によって倒壊し、 再建された時期があったのですね。
残念なことに イエス・キリストに導かれ 洗礼を受けたクリスチャンであった大統領の命によって 浦上天主堂は、
同じ神を信じた多くの尊い命とともに、 天へ帰ることとなってしまったのでした。
イエス・キリストが十字架にかけられ 磔刑の後、復活の奇跡を人々に示したように 浦上天主堂は、今は復活した美しい姿を見せています。
当時の面影は、やはり薄れてしまっているそうですが 焼け焦げたアンゼラスの鐘と聖母マリア像が
この街に住む方と訪れる人々に 人類の歴史を刻んだ一日を 今も静かに物語っているように見えます。

同時に 憎しみを捨て 赦しを与える寛大な心と強さを持つことで
神々しいまでの 満たされた生を手に入れられることを 強く 静かに 私たちに伝え続けているように 思います。
もし 8月6日の広島に雨が降っていたら 8月9日の小倉が晴れ渡っていたら
おそらく間違いなく小倉に 原爆が投下されたことでしょう。
そうしたら、私はまず生まれてくることが できなかったでしょうし 当然こうやって文章を綴っていることもないはずです。
私たちは、ふだん意識することはありませんが 私たちの命は、私たちだけのものではありません。
次の世代の命を育むためのものでもあります。
今ある命を絶ってしまうことは、 これから先、生まれてくるかもしれない命を 絶ってしまうことでもあるのですね。

71年前の運命の日、小倉に原爆が投下されなかったために この世に生まれてくることができたのかもしれないと思うと そのことを「幸運」とか「運命」いう言葉で語るには、 やるせない思いを感じずにはいられません。
このように原爆の問題は、 広島と長崎だけの問題では ありませんでした。
戦争当時アメリカは、原爆の投下予定地として 複数の都市を 候補にしていました。

たとえば、首都圏有数の政令指定都市である横浜も 原爆の投下予定地として有力視されていましたが 5・29の横浜大空襲のため、投下予定地から 外されてしまったそうです。
最終的な投下目標が絞られた後も 米軍は、原爆投下に備えた訓練のために、
東京、静岡、茨城、福島、新潟、富山、愛知、 京都、岐阜、滋賀、大阪、愛媛、徳島、山口 をはじめとした約50箇所に 「パンプキン爆弾」という 原爆と同じ重さの通常火薬を積んだ 模擬原爆を投下しています。
大阪の東住吉には、模擬原爆が投下された 記録を残すための碑が 現在も残っているそうです。
そのことを考えると、広島や長崎の方だけでなく、 他の地域で生まれ育った方も、ひょっとすると、 この問題に大きく関わりを持たなければ いけなくなっていたかも しれませんね。

誤解のないように付記しておきますが、 僕は、アメリカ政府が決定した原爆投下の加害を 責めるつもりはありません。

紙幅が足らないため詳細は割愛しますが すでに70年以上の時間が経過していますし 当時は、日本を含め、 第二次世界大戦に参戦した全ての国が 必ずしも戦争を望む意見を述べている方ばかりでは なかったからです。

また、戦争という極限の状態の中、 当時、第二次世界大戦に参戦していたそれぞれの国にも 人としての理想を貫いて善行を行った 人たちがたくさんいました。
アメリカをはじめとした当時の交戦国もそうですし、 日本もそうです。
それなのに、戦争は止められず あれだけの被害を生んでしまった。
それはなぜでしょうか?
この矛盾について考えなければ 私たちの住む世界は、また近い将来、同じことを 繰り返してしまうのではないかと思うのです。

困難な中、他の方に愛情を注ぎ、 人として生きる理想を貫いた人たちがいたことを忘れ 「加害と被害」という視点から過去の戦争を 検証することは、
過ちをののしり 新たな憎しみの連鎖を生むだけに なってしまう可能性があります。

赦し、赦されるために
そして、かつて交戦した国々の方たちと 未来を作っていく最良の方法を模索するために なぜあのような悲劇を生んでしまったのか 歴史の事実を学ぶとしたら、 あの戦争は、
今を生きている人 そしてこれから生まれてくる人の 命を守る尊い教訓になるのではないか、と思います。
ぜひ、そうあってほしいですね。
ご存知のように、国際情勢が悪化する中、 進歩した科学技術のおかげで、 自国にいながら 他国に核兵器を到達させることのできる ミサイル技術が完成しています。

このことから分かるように、核や平和維持の問題は、 対岸の火事ではなく、私たち一人一人の生活に直結した 問題なのですね。
戦争や核の問題を考えることは、 ほかの誰のことでもなく 自分の生活を守ることでもあると思うのです。

生活していくことは、とても大変なことで、 自分の周囲のことで手一杯というのが 現状ということも珍しくありませんから 無理からぬご意見だと思います。

ですが、私たちの生活は、 経済の発達によって否応なしに、 世界の動きと連動する時代になっています。
その動きが、私たち一人一人の生活に リアルタイムに 直接影響を与える時代になっているのです。

何気なく見過ごしてしまいがちですが、 ちょっと観察してみてください。
たとえば夕食のお買い物にでかけるスーパー 食料品やティッシュが値上がりしていませんか?

夏が旬で、値段がうんと安くなるはずの野菜が 異常なくらい高くなっていませんか?
その理由を全て説明する 紙幅はありませんので割愛しますが、 大きな原因の一つは 食料品を包装したり製造するための材料になる石油が 他国の戦争で値上がりしているからです。
このように、 聞いたこともない遠い遠い国で起きた出来事のせいで 私たちの明日からの生活が変わってしまうことが いつ起きてもおかしくない時代になってるのですね。
世界の平和を考えることは 私たち一人一人が自分の生活を守ることでもあるのです。 何も難しいことを考えることはないと思うのです。

私たち一人一人の生活が世界と密接につながっている以上 自分の生活圏の中で見える何かを考えることで、 この世界が変わっていくと思うのです。

「戦争」という国家規模の巨大な問題も 要はこの世界で暮らす 私たち人間一人一人の生活から生まれてくる 問題なのですから。
なにより一番恐ろしく危険なのは、 他者に関心を持たないことだと思います。

自分や自分の大切な人が 真に安全に暮らしていけるためには どうしたらいいのか。
この国に暮らす一人一人の人が、この問題の 真の解決方法を模索し 他の意見を持つ方たちと論議して最良の方法を 考えることで、
核を含めた平和の問題や、 不安定な世界は、大きく変わっていくのではないか、 と私は考えています。

広島、長崎の原爆、 そして第二次世界大戦の本土空襲で亡くなられた民間の方、 ならびに戦闘行為によって尊い命を落とされた 日本の兵士の方々、当時の交戦国の兵士の方々、 そして民間の方々に慎んで 哀悼の意を表します。

正義の名の元に 多くの方の命が奪われることが もう二度とないように
そして、神の心を宿した人たちが 一刻も早く、尊い命を奪い合う争いをやめてくれることを 心から願ってやみません。

MAY GOD BLESS YOU ALWAYS

| | TrackBack (0)

« July 2016 | Main | November 2016 »