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February 11, 2011

「特高」復活か? 市民も冤罪の標的にされかねない検察審査会の盲点

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集会開始前に憲政会館に並んだ市民。
この日は国会議員が相当数集まることもあって、支持者も多かったが、検察審査会問題の疑念について知りたくて参加したという方も多かった。(2月9日 東京永田町 憲政記念館前 午後4時ごろ)

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集会終了後、登壇者から公開された、検察審査会が小沢一郎氏に対して行った強制起訴の矛盾点について意見交換をする市民。
検察審査会に付与された強制起訴の機能を監視しなければ、冤罪で投獄される市民が出るのではないかという聡明な意見も聞かれた。(2月9日 東京永田町 憲政記念館前 午後6時50分ごろ)

憲政記念会館満員!!550人の市民を集めた検察審査会の疑惑を究明する市民と議員の会
 

■「平成の特高」復活か? 市民も冤罪の標的にされかねない検察審査会の盲点

戦前に存在した「特高」を知っているだろうか。正式には特別高等警察という。

体制批判を行ったり、政府の意向に沿わないと考えられる思想を持つ団体や個人を、場合によっては法令に依らず逮捕した。取り調べ時には、拷問を加えることもいとわない存在として、市民から恐れられた。

戦後、新しく制定された憲法および刑事訴訟法により、被疑者の権利と公平な審理が重んじられるようになった。

現在は、我々が司法機関から逮捕・取り調べを受ける場合であっても、「弁護士に弁護を依頼する権利」「自分にとって不利なことを話さなくてもよい権利」「拷問などを用いた取り調べの禁止」などといったことが保障されている。

刑法で定められた刑罰を誤って執行すれば、人一人の人生を変えてしまう可能性がある。特別高等警察が存在した時代の反省から、犯罪者か否かという審理は慎重に行われるべきだと考えられるようになった。

しかしながらここにきて、罪を犯していない人物を、意図的に逮捕して有罪に持ち込もうとする「検察が作りだした冤罪」が、いくつも白日の下にさらされている。

2009年7月9日、偽の障害者団体証明書を発行し、不正に郵便料金を安くダイレクトメールを発送させたとして、厚労省局長である村木厚子氏が、虚偽有印公文書作成・同行使罪で逮捕・起訴される事件が起きた。

しかしながらその後の経過において、逮捕・取り調べにあたった前田恒彦特捜部主任検事が、証拠を改ざんしていた事実が発覚した。

このことが決め手となり、無罪判決が言い渡されたが、我が国において、被疑者を刑事裁判にかける強権を発動できる検察が意図的な冤罪を作りだしたことは、社会に大きな動揺を与えた。

その動揺とは、言うまでもない。
我々が身に覚えのない容疑で逮捕され、投獄される可能性である。検察が「平成の特高」と揶揄されるようになった所以である。

だが、「平成の特高」となりうる存在は検察だけではない。気付いている人は少ないようだが、小沢一郎氏の強制起訴に踏み切った検察審査会も同様である。

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■実像が見えない検察審査会の暴走―検察審査会は公平を保っているのか

検察審査会が「平成の特高」になりうる可能性については、まず、刑事事件の手続きについて簡略に触れる必要があるだろう。紙幅の関係で、刑事訴訟法の詳細な手続きに沿って記述しないが、その旨、ご了承いただきたい。

罪を犯した疑いがある者(被疑者)は、裁判所が発行した逮捕状をもとに、警察が逮捕を行う。(検察が直接逮捕を行う場合もある。)その後、容疑者は検察庁に送られ、検察官が捜査・取り調べを行って罪を問うか否かを決める。

この場合に、検察官が刑事裁判にかける必要がないと判断した場合は、「不起訴処分」となり、被疑者は釈放される。

しかしながら、検察官も法律のプロとはいえ、人間だ。判断ミスもありうる。

また、法律に基づいた公平な取り調べが行われているとしても、市民の感覚からすれば、検察官の判断が、社会通念から逸脱していると感じられる場合も出てくる。

市民の大多数から、「刑事裁判をきちんとやれ」という意見が集まる場合もあるだろう。

そのような場合のために、検察審査会という組織が設けられている。

検察審査会とは、検察審査会法という法律に基づき、無作為の抽選で選ばれた11人の市民が、検察官が不起訴とした事件について、刑事裁判で審理を行うべきか審議する組織である。

11人の審議員のうち、過半数が「不起訴は納得できない」と判断するか、8人以上が「起訴するべきである」と判断した場合は、検察官に再度捜査を検討するよう求めることができる権限が与えられていた。

ただし、改正される前の検察審査会法41条では、検察審査会の議決に拘束力はなく、検察官に検討を進言することしかできなかった。
(起訴すべきという議決が出ても、検察官は必ずしも再捜査・起訴を行う義務はなかった)

そのため、改正された検察審査会法では、2度の起訴相当の議決(市民の中から選ばれた検察審査会の審議員が8人以上、かつ、2回起訴すべきと議決した場合)で、検察官に代わり、指定弁護士が容疑者を強制起訴できるようになった。

 法のプロである検察官の判断と、市民の大多数が抱く社会通念をすり合わせる方法として、この法改正は喝采を浴びた。

 だが、この改正は、冤罪を生む可能性が潜んでいる。
 検察審査会において、どのようなプロセスで審議が行われるか、可視化されているとは言い難いからだ。

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この日、小沢一郎議員を強制起訴した、東京第五検察審査会の調査報告を行う森ゆうこ参議院議員

■民主党小沢一郎議員の強制起訴から、我々に降りかかる冤罪を考える

 話を「検察審査会の疑惑を究明する市民と議員の会」に移そう。

2月9日、東京の永田町にある憲政記念会館で行われたこの集会は、民主党・小沢一郎議員が検察審査会によって強制起訴された事件を疑問視する人たちの集会だ。

強制起訴に至るまでの、小沢氏に対する検察の捜査は、NHKが平易な解説をしているので、参照されたい。http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/2011/01/31/

引用元のNHKの解説によると、小沢一郎氏は、自らの政治団体「陸山会」の平成16年、17年分収支報告書について、虚偽記載を行ったとして、政治資金規正法違反に問われた。

検察は、元秘書らを起訴したものの、小沢一郎氏については、2回にわたって不起訴処分とした。
しかしながら、市民11人で構成する検察審査会は、起訴相当とする決議を2回出したため、小沢氏は、強制起訴されることとなった。これが、現在までの経緯である。

この流れだけを見れば、「小沢氏に対する疑念を、裁判で検証しようとするのに、何が問題があるのか」という意見もあるだろう。

しかしながら、この問題について集まった資料を精査すると、隠れていた問題点が見えてくる。検察審査会に付与された、強制起訴の機能が悪用される可能性があるのだ。

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小沢一郎議員を強制起訴した、東京第五検察審査会の資料を提示しながら説明する登壇中の、森ゆうこ参議院議員 
この日、インターネット動画放送Ustreamおよび、ソーシャルメディアツイッターで、来場者以外にも報告が視聴できる形を取った。
インターネット上からは、小沢一郎議員を強制起訴した東京第五検察審査会についての疑問や、本記事で主張する市民の冤罪が作られる可能性についての意見が見られた。

■不透明な検察審査会のプロセス

この日の集会で登壇した民主党の森ゆうこ参議院議員は、検察審査会が行った強制起訴までのプロセスを精査した人物の一人である。

森ゆうこ参議院議員は、小沢一郎議員を矯正起訴した、東京第五検察審査会について複数の疑問点を指摘している。

その中でも、もっとも会場の注目を集めたのは、検察審査会の審議員の選出方法である。

検察審査会側は、審議に携わる11人の人物を、くじびきを行うソフトウェア(有権者の中から、無作為に検察審査会の審議員を選び出すソフト)を専門家に発注して製作してもらい、抽選を行ったとしている。

ところが、無作為の抽選にもかかわらず、選出された人物の平均年齢が異様に近い。(統計学的には考えにくい)

また、およそ、存命であるはずのない人(1600年代生まれの人が名簿に含まれていて、抽選ソフトが動かなくなったという証言が得られている)がデータとして入っていたことなどをはじめ、ほんとうに無作為の公正な抽選が本当に行われたのか、疑念を抱かざるをえない複数の矛盾点を指摘している。

さらには、東京第五検察審査会側が開示した審議のプロセスにおいて、市民審議員の召集、審議の進行などに、不明瞭な点があまりにも多い。

紙幅の関係で割愛するが、この日、森議員が提示した資料を精査すると、東京第五検察審査会側が主張する審議の公平性を、100パーセント認めるのは難しいように思う。

これは、あくまでも「疑念」である。
だが、意図的に特定の人物を選んで、検察審査会を開くことができるとしたらどうだろうか。

もしくはプライバシー保護などを理由にして、抽選で選ばれた審議員以外の人物で、検察審査会が開かれていたとしたらどうだろうか。

意図的に起訴相当の議決を2回出すことができれば、容疑者が潔白であっても、自動的に刑事裁判にかけられることとなってしまう。

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登壇した議員はじめ、様々な方の意見を聞く500名以上の参加者。立ち見が出る満員状態となった。登壇者以外に、三十名余の議員が来場した。
議員の支持者だけでなく、この問題の真相―市民の冤罪を生む危険性について知りたくて参加したという市民も多かった。

■検察審査会に付与された強制起訴機能―市民を意図的に刑事裁判にかける可能性はないと言えるのか

私が一番危惧しているのは、前述の疑念が払拭されないまま、私たち市民に検察審査会の強制起訴が適用されることの危険性である。

もし、我々が、身に覚えのないことで刑事事件に巻き込まれた際に、検察官が公平な審理を行って不起訴となったとしよう。

その際に、検察審査会の独立と公平性が守られず、特定の人物や組織の指示が入り込む余地があるとしたら、無実の市民が刑事裁判にかけられてしまう可能性が生まれる。

その結果、身に覚えのない罪で、無実の市民が有罪にされてしまったとしたら、これは、もはや司法手続きではない。かつての特高と同じであり、ファシズムの復活である。

小沢一郎議員の強制起訴は、どうだろうか。
我が国では、法の下の平等が保障されている。
司法手続きの下では、いかなる社会的立場の人であっても、公平な手続きがなされなければならない。

つまり、小沢一郎議員を強制起訴した東京第五検察審査会が、公平な手続きを行ったか証明しなければ、今度は私たち市民が、冤罪に巻き込まれる危険を生んでしまうことになるのだ。

検察審査会の強制起訴を「平成の特高」にさせないためにも、我々は、今日の集会に参加した市民や国会議員の発表を慎重にウオッチする義務があるのではないだろうか。

東京第五検察審査会の調査報告を行った 森ゆうこ議員の登壇の映像は、こちらのリンクで見ることができる。ぜひ一度ご覧いただきたい。

http://www.ustream.tv/recorded/12564703

参議院議員 森ゆうこ議員の当日の報告ブログ

この国で「あたりまえ」に暮らす我々の権利は守られるのだろうか。
そのためにも、今後の動きに注目したい。

なお、東京第五検察審査会に対する真相追及の請願署名を弁護士や市民団体が中心となって行っている。

関心のある方は、ご高覧いただきたい。

請願署名のお願いちらし 「seigannegai.pdf」をダウンロード

請願署名用紙 「seigansho.pdf」をダウンロード


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Comments

私のブログで取り上げさせていただきました(o・ω・)ノ))

Posted by: | February 11, 2011 10:14 PM

まったく同感。

今回の小沢氏強制起訴はあまりにも疑念が多い。

検察審査会は検察の別働隊としての機能を有するに等しい。

つまり、事件によっては公正に審査会を見守るが、ここぞと思うときに恣意的に利用する。

これが一番たちが悪い、過去何十件のケースの中に一件だけ検察の意向を反映させると、発見は至難の業で、かつ利用するほうは思いのままである。

Posted by: | February 11, 2011 10:40 PM

ご高覧ありがとうございます。当日の会場の様子をインターネットで放送したUstream動画をご覧いただくと、森ゆうこ議員が主張しておられる検察審査会側が開示した情報の整合性に疑問を感じずにはいられないという方がほとんどでしょう。

実は、森議員から資料を直接お預かりしていますが、速報性を重視すべきと考えたこと。

また、森ゆうこ議員は、小沢一郎議員と同じ民主党議員であることから、利害関係を完全に排除した形で
(誰が見ても、東京第五検察審査会の審議が公正でない形で、進んだことを確認すべきという意味です)、
この日、提示された資料を慎重に精査し、公表すべきと考え、掲載を一旦見送りました。

本ブログにおいて、再度検証記事を掲載させていただきたいと思います。今しばらく、お時間をいただければ幸いです。

Posted by: 松沢直樹 | February 11, 2011 10:52 PM

検察審査会の権限が強化されたのは不起訴がおおい交通事故処理に対する被害者・遺族の不満によるところがおおきく、強制起訴制度ができたときは世論はおおむね歓迎していたとおもいます。

しかし、民意によって左右される刑事司法はかなり危険なもので、検察審査会の権限を強化するならば証拠の全面開示や強制起訴事件における指定弁護士の無罪に対する上訴の原則禁止といったバランスをとる必要があったとおもいます。

Posted by: Piichan | February 13, 2011 01:36 PM

Pichan様
コメントありがとうございます。
検察審査会制度は、ご指摘のとおり、交通事件について適用されるケースが多数でした。
改正前の検察審査会法を見てみると、刑事訴訟法上の告発よりもどちらかといえば、簡単な手続きで、不起訴処分に対して、市民が再捜査を申し立てできるようになっているかと思います。
考えてみれば、このあたりにも法の悪用の脆弱性があると思うのですが、ご指摘のとおり、検察審査会の権限を強化するなら、検察審査会の権限を強化するならば証拠の全面開示や強制起訴事件における指定弁護士の手続きの開示なども明確にすべきですね。

2・9 森ゆうこ議員が開示した情報は、本記事からリンクを貼ったUstreamでご覧いただけますが、そちらをご覧いただくと、メディアが報じないこの問題が、小沢一郎議員の刑事手続きの正当性だけでなく、我々市民が冤罪に巻き込まれる可能性を示唆していることが、おわかりいただけるかと思います。

Posted by: 松沢直樹 | February 19, 2011 10:04 PM

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