« 紙の本と電子の本の比率 | Main | メメント・モリ »

December 04, 2008

アメリカの大学生たちと原爆についてスカイプで討論する

年末進行まっさかり。
今年は、12月に入って仕事が減ったので、ちょいと焦り気味なのですが、とにかく走り回った一年だったので、最後の月くらい自分の作品を書いたり、企画を画策したりして過ごそうと思ってます。

そんな中、昨日はアメリカの大学生たちとスカイプで討論して時間を過ごす。

ウェブカメラとスカイプで、映像と音声をリアルタイムに交信できるから、すごい時代になったもんだよね。

僕があまり英語が堪能でないことを配慮してか、日本語が堪能な学生さんが通じにくいところはフォローを入れてくれる形になった。

以下、ディスカッションの一部を

学生「今日は貴重な時間を割いていただいて、ありがとうございます。時差を考えてアメリカの昼間に合わせていただいたということを聞いて、とてもみんな嬉しく思っています。

Naokiさんの作品「ぼくたちの空とポポの木を読ませていただきました。

http://www.dotbook.jp/dotbook/details.php?id=machi_00031

スタンダードな日本語ばかりではないので(注:上記の作品は、昭和50年の小倉が舞台になっているので、作品中に多々九州弁の会話が登場する)、少し難しかったですけど、子供達が協力して色々なことを実現していくのは素晴らしいですね。

アメリカは、開拓から国の歴史が始まっていることもあってか、チャレンジャーが困難を乗り越えて成功をつかむ物語を好む傾向があります。この作品はまさにそれですよね。子供向けの作品なのに読み応えがある作品で、大学内で話題になっています。

(学生の一人)僕の父は小学校の教師なので、私的に英訳したものを読むように勧めました。父は日本文学というと、おそらく夏目漱石と村上春樹くらいしか触れたことがないと思うのですが、教えている子供達にも読ませたいと言っていました。

特に、作品の中に出てくる小学生の担任のひろえ先生の思想は素晴らしいと絶賛してましたよ。僕も将来、小学校の教師になるつもりですが、彼女のように、子供達に解決方法や問題点を考えさせられる教師になりたいと改めて強く思いました。僕の主観なのですが、Naokiさんのこの作品は、アメリカで強く支持される作品だと思っています」

松沢「ありがとう。そちらでは僕がどう評価されているのか分からないけど、少なくとも、スティーブン・キングほど忙しい作家ではないからね。あれから2年間、単行本を書いてくれという依頼は全く無い(一同笑)」

学生「それくらのお休みが必要なくらい、力のある作品だと思いますよ」

松沢「少し休みすぎた気もするんで、次を書いてるよ。(一同笑)たしかに大人も支持してくれているのは事実だと思う。あの作品はインターネットで購入できるんだけど、VISAカードとMASTERカードの利用率が高いから、アメリカや欧州の大人が読んでるんじゃないかな(一同笑)」

学生「Naokiさんの作品を読んでみて思ったのは、ずいぶん表現がおだやかだなと思ったということです。それは全員がそう言っています」

松沢「というと?」

学生「原爆の被害については、ほとんど触れられていないし、今までの原爆をテーマにした文学作品は、冷静な批判ではなくて、感情的なアメリカに対する嫌悪感が強く表れた作品が多かったと思います。Naokiさんの作品は、アメリカに対しての嫌悪感というか、原爆についての抗議はほとんどされていないでしょう? それはどうしてなんですか?」

松沢「まず、少しショッキングな話をしよう。僕は、日本の北九州という所で生まれて育った。この街は、米軍が長崎に投下したプルトニウム原爆の投下目標だった街だ。

もし、予定通り投下されていたら、僕は君達とこうして話していることはないだろうね。
皮肉なことに前日に行われた近隣都市の空爆の残煙で、攻撃目標がはっきり確認できなかったから、当日になってボックスカーが針路を変えて、攻撃目標を長崎に変更したんだそうだ。

近隣都市で焼け死んだ人たちの煙に守られて生まれてくることができたとも言える」

学生「それなのにどうしてアメリカを恨もうとはしないんですか? クリスチャンとしての信仰を守っているからですか?」

松沢「それもあるけど、僕自身、原爆の直接の被害を受けたわけではないからね。小さい頃、実際に被曝して健康を損ねていく人たちを目の当たりにしてきたから、アメリカに対して、悪い感情を持ったことはある。

だけど、ライターになった後、日米の様々な人に出会って色々な意見を聞くうちに、もっと別の視点でこの問題を捉えなければならないと思うようになったんだ」

学生「アメリカに対しての見方も変わったということですか」

松沢「そう。まず、アメリカが第二次大戦中に投下した原爆や本土空襲については、当時の国際法に鑑みれば違法行為であったという考えは変わっていない。

真珠湾攻撃についても、連合国側が違法行為という認定をしていない以上、アメリカ政府は、当時の国際法で禁止されていた民間人を攻撃目標にした本土空襲や原爆投下については、きちんと人道的なステートメントを出すべきだろうと考えている。

同時に、第二次世界大戦以降の時代の中で、多くのアメリカの市民が戦争で犠牲になったという認識を持つべきだとも思っている。

君達の友人の中には、大学への進学費用を捻出するために軍隊に入隊して、戦地に送られて連絡が取れなくなった人がいるかもしれない。

お父さんや親戚の叔父さんの中には、ベトナムへ徴兵された経験がある人がいるかもしれない。おじいさんの中には、太平洋戦争だけでなく、朝鮮戦争で大変な経験をした人もいるかもしれない。 特にベトナム戦争の時は、韓国は出兵したが、日本は憲法9条と国民の反対もあって、出兵することはなかった。
日本に軍事的脅威がせまっていたベトナム戦争や朝鮮戦争の際に、日本は軍事力を行使せずに、アメリカの市民が盾になったという見方もできると思う。

そういった歴史の事実を善悪の観点を超えて、一つ一つ冷静に見つめなおさないと、お互いを責めるだけで、何一つ変わらないと思うんだ。

原爆の問題について焦点を絞ってもそうだと思う。実際にアメリカが原爆を投下する間に、マンハッタン計画に参加した科学者や、政治家、米軍首脳部の中にも、少なからず投下に反対する人は少なくなかった。
威嚇として使われるとばかり思っていた核兵器が実際に使われてしまったことにショックを受けて、研究者としての人生を捨ててしまった優秀な人たちもいた。

それなのに、なぜあのようなことに至ったのか。
広島に至っては、米軍兵士が捕虜になっていることを知りながら、投下に至っている事実がある。
原爆投下を命令したトルーマン大統領に至っても、有名なアメリカ人カメラマンのジョーオダネル氏のインタビューに対して、原爆投下は個人としては後悔しているという回答をした事実が残っている。

最高権力者である大統領ですら、戦争の狂気の伝染は食い止められなかったということだ。

そういった事実から、暴走する戦争の狂気について、国を越えて冷静に多くの人に見つめてもらう必要がある。
だから、自分の作品の中では、アメリカを責める内容や、原爆の被害については触れなかったんだ」

学生「アメリカの歴史教科書は、日本の歴史教科書より平均的にみてページ数が多いです。

その中で、大事に世界大戦については詳しく触れられていますが、原爆の問題についてはほとんど触れられていないか、アメリカの正当性を主張するものがほとんどです。

これについてはどう思われますか?」

松沢「ほとんどの人が知らないんだけど、実は1944年ごろに、日本も原爆の開発研究を行っていたんだ。

ウラン235の遠心分離が不可能だったために、結局実現しなかったみたいだけど、当時の技術力からすれば、あと3年ほど戦争が長引いていれば、完成してて実際に使用した可能性はあっただろうね。

そのこともあるし、アメリカ本土に多数落下した風船爆弾なんかの影響を考えると、アメリカ政府の中に、恐怖心に駆られて原爆投下をごり押ししようとした人がいたのも理解できるような気がする

そして、第二次世界大戦が終結した後は、ソビエトと対立する時代になってしまったから、アメリカは日本に対して原爆の問題を詫びることが政治的に難しくなってしまったのは事実だろうね。

話がずいぶん迂回してしまったけど、僕が君達に伝えたいのはこういうことだ。

どちらが正義であろうが、政治としてどのような主張をしようが、今の時代は一度戦争を起こせば、確実に双方に犠牲になる人たちが大量に出るということだ。

アメリカは、今、肌でそのことを感じているだろう?

イラクやアフガンで劣化ウラン弾を大量に使っているから、帰還兵の中に必ず深刻な健康被害をきたす人がでてくるはずだ」

学生「その話は知っています。メディアでは報道されませんが、深刻な問題だと思っています。

(学生の一人)実は僕は、長崎の平和祈念資料館を見学したことがあるのですが、原爆の脅威はもちろん、同じ問題が、今の僕達と同じ世代にも起きていることを知って愕然としました。とても恐ろしいことだと思います」

松沢「アメリカは、軍事費がGNPの50パーセントを越えているでしょう? もはや戦争を続けないと今の生活が成り立たない状態になっているわけなんだけど、その状態から脱出するには、どうしたらいいのか?

できるだけ多くの人が世界の安全に関する情報に関心を持って共有しながら、新しい方法を模索しないといけないと思う。キューバがいい例なんじゃないかな。

アメリカとキューバは、あまり政治的に良い関係とは言えないけど、キューバ危機を乗り越えた経験があるし、過去の原爆の問題を通してならもっと話し合える機会があるんじゃないだろうか」

学生「だから、あの原爆をテーマにした話は、同じ果物を食べると友だちになれるという話にされたんですか? 争うよりも話し合えるように? 作品の中で、子供が消しゴムをめぐって論争するシーンのあとに、ポポの実を一緒に食べて仲直りするシーンは印象的でした」

松沢「そう。面白いことを一つ教えよう。あの物語の中で出てくるポポという果物は、北米原産なんだ。」

学生「へえ~だったら、僕達も同じように友だちになれますね」

松沢「種を送るのは検疫の関係で難しいかもしれないけど、送れるようにしてみるよ。実がなるのは何十年もかかるみたいだけど、君達の子供の世代の人たちがもっと理解を深められるようになるといいね」

学生「その前に、日本に行ってみたいです。是非もっと色々な話を聞きたいですね」

松沢「ハリウッドで映画化されるとみんなを日本へ招待するくらいの渡航費はすぐに出るんだけどね(一同笑)君達がもし日本に来るなら、訪ねてきてほしい。もっと色々な話をしよう。僕もアメリカへ渡る機会を作って、もっと色々な話をしたいと思う」

学生「その日が早く来て欲しいですね」
松沢「願えばかなうと思う。僕はこの物語をたった一人で書いたけど、その時は、これだけの人に読んでもらえるとは思っていなかったから。

だから、そう遠くないうちに君達に会うことも実現できると思うよ。

そして、みんながもっと安心してお互いのことを知りたくなる世界を作ることも実現できると思うよ」

学生「そうですね。必ずそうなると思います」

|

« 紙の本と電子の本の比率 | Main | メメント・モリ »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/48258/43314468

Listed below are links to weblogs that reference アメリカの大学生たちと原爆についてスカイプで討論する:

« 紙の本と電子の本の比率 | Main | メメント・モリ »