この作品には、魔が潜む
高木敏光氏製作のゲーム「クリムゾンルーム」をノヴェライズした作品。ノヴェル化される元となったゲーム「クリムゾンルーム」は、2004年1月にフラッシュ版として公開された後、瞬く間に世界中で熱狂的な支持者が続出。
2006年には携帯コンテンツとして移植され、2007年にはニンテンドDSソフトとして発売されたメガヒット作品。
おはずかしながら、僕はゲームをほとんどやらないので、クリムゾンルームの存在は知っていたものの、高木氏の製作だとは知らなかった。
そういうわけで、今回小説化された作品を、ゲームの焼き直しではなく、全く新しい一つの作品という形で読むことになった。読み進めるとこれがまた面白い。
ネタバレになるので、あまり深くは触れないけど、登場人物一人一人の描き方が非常に濃い。生きた人間を描いた躍動感があるし、人間臭さや交差する心の距離などといった表現が随所に光っている。
マルチメディアやインターネットをモチーフにした作品は、10代~20代の読者に共感を呼び起こす作品がほとんどだが、この作品は、30代、40代の読者にもじゅうぶん響くものがあると思う。
大ヒットゲームをノヴェライズ化した小説というよりも、「ネット」「マルチメディア」という素材を盛り込んだ新しいタイプのハードボイルド作品といった方がいいかもしれない。
ネタバレにならないように、軽くストーリーに触れておこう。
ストーリーの舞台は北海道・札幌。
かつて一世を風靡したものの、才能が枯渇してしまったマルチメディアクリエーター「高木」の凋落した様を描くシーンからストーリーは始まる。
メガヒットコンテンツを製作し続けたものの、製作の現場から離れることを余儀なくされ、転属先でくすぶる高木。
高木宛に送られてくるメールには、かつてクリエーターとして全盛期を誇っていたころの作品を待ち望むファンからのメールが、今でも途切れることはない。
苛立ちを募らせる中、ある日、高木の作品に心酔する若きクリエーター「K」からのメールが届く。半ば強引で身勝手なメールの文面に、高木は相手にするのをはばかっていたが、偶然が重なる形で、高木はKと出会うことになる。
「高木の作品に心酔している」というKが作った作品。作品を見た高木は、Kが特異な才能を持ち合わせていることを一目で見抜く。
Kの才能を見抜いたことは、マルチメディアクリエーターとしての高木の才能が枯渇していないことの証でもあった。
創造の衝動が二人の中で芽生える中、事態は思わぬ方向に展開していく。
ストーリーの梗概はこれ以上触れません。実際に手にして楽しんでくださいね。
個人的には、ストーリーだけでなく、高木をとりまく女性の人物像も非常に魅力的だと感じましたね。
桐子やマリアンヌ、彼女たちの存在が、ネットをモチーフにした既存作品のイメージを越える作品世界を構築していたように思います。
小説「クリムゾン・ルーム」公式サイト