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November 2004

November 21, 2004

父が亡くなる

新しい取引先の原稿を仕上げていたら、夕刻になって弟から電話があった。
入院していた父が亡くなったらしい。
母と同じく、とうとう二人とも死に目には会えなかった。
残念としか心情が綴れない自分が情けない。

母が亡くなってからちょうど一年。
やはり父は後を追ったのだろうか。
だとしたら、あの世で母と再会できたのだろうか。
それだけが気掛かりだ。

ファッションデザイナーだった母は、若い頃、自分のブランドを立ち上げることに夢中だった。
ギタリストだった父は、若い頃、自分の生み出した音楽を世に送り出すことに夢中だった。


やがてスポンサーの目にとまった母のデザインした服は、、
はるか離れた大阪や東京に住む若者たちをも魅了しはじめる。
街角で学生運動の大学生に混じってかき鳴らされるだけだった父のギターは、
メディアの目に止まり、多くの若者にメッセージを届けるようになる。

そんな二人だったから、自らの内に深く横たわる深い溝を埋める相手がいなかったのだろう。

運命的に出会った二人は、自分たちの世界を捨てて、平凡に生きていくことを選んだ。
母はデザインをやめ、収入のよい高級仕立て紳士服を縫うようになり、
父はギターを捨ててネクタイを締め、日々満員電車に揺られるようになった。

ある程度の年になっても、二人は自分たちが出会ったこと、
そして自分たちがしてきた選択に未練があったらしい。

僕がコピーライターになり、広告デザインの仕事を始めたとき、母は眼を輝かせて喜んだ。
弟がプロの作曲家として活動をはじめた時、父は、何度も彼のライブを見に行きたがった。

その目は、自分たちの夢を息子達が叶えてくれたという、微笑ましいものではなく、芸術家ならではの
内側に秘めたリビドーと憎悪をほとばしらせていたように思う。

今はどうなのだろう? 二人は何を思っているのだろう?
そんなことを考えながら、僕はただただ文章を書いている。


二人とも今ごろ、雲の上で、ずいぶん早く会えたね、なんて言ってるんだろうか。だったらいいんだけどな

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